動物の補完・代替医療には、いろいろな治療法がありますが、今回はオーストラリア発祥のボーエンセラピーについてご紹介させていただきます。
ボーエンセラピー
ボーエンセラピーとは、主に筋膜の緊張を和らげることに注目した治療法です。
筋膜には、皮膚の下で全身を包み込んでいる浅筋膜と筋肉を包みこんでいる深筋膜があります。筋膜は、筋肉などを保護したり、筋肉や臓器をあるべき場所に収めるという役割を担っています。筋膜には、レセプター(神経を介して刺激を伝達する)が存在しており、筋膜がうまく作動しないと、体に痛みが生じたり、身体の各機能にまで影響が及ぶと考えられています。ボーエンセラピーは、この筋膜の緊張を弛緩し、痛みを軽減して身体の機能を正常な状態に戻すという治療法です。
ボーエンセラピーは、オーストラリア人のトーマス・ボーエン氏が創始し、50年以上もの間オーストラリアで、最近では世界各地で施術されています。これまでに、多くのボーエンセラピストが養成され、オーストラリアではあちらこちらにボーエンセラピーの看板を見ることが多くなりました。最近ではアニマルボーエンセラピーコースが開設され、ボーエンセラピーを受ける動物が増えてきたようです。
アニマルボーエンセラピーの効果
ボーエンセラピーは、首や肩の痛みや腰痛、股関節痛などの他、関節炎や過去の骨折などによる痛みにも効果があると考えられています。また、呼吸器や肝臓、腎臓の病気にも効果的だといわれています。
犬のボーエンセラピー
以前、お世話になった動物病院の獣医師の方がアニマルボーエンセラピストの資格を取得し、病院でアニマルボーエンセラピーを行っていました。犬への施術が一番多く、関節炎などによる跛行や体の痛みを訴える犬が治療を受けていました。1頭の治療時間は約20分~1時間。(犬の大きさや症状により異なるそうです。)飼い主さんもしくは動物看護師さんが診察台の上にワンちゃんを寝かせて保定します。
治療を受けるワンちゃんは、どこかしらの筋肉や筋膜が緊張しているため、その部位を治療するときには少々痛がることがあります。その時には、すかさずトリーツをあげてワンちゃんの気を紛らわします。
セラピストによって治療内容が少々異なるようですが、私が見学したアニマルボーエンセラピーは、ストレッチと強めのマッサージを組み合わせたような治療でした。治療を終えた飼い主さん何人かにボーエンセラピーの効果について尋ねたところ、治療後、数日間は体が痛そうだけれど、その後は歩様がよくなり、犬はハッピーそうだという意見が多く聞かれました。
そして、多くのワンちゃんは1カ月に1度、もしくは2ヶ月に一度、状態に合わせて定期的なボーエンセラピーを受けていました。強い治療を受けたワンちゃんには痛み止めが処方されていました。
最後に
私が実際に見学させていただいたアニマルボーエンセラピーは、少々痛そうな治療法でしたが、他のボーエンセラピスト(人や動物)のサイトを拝見すると、痛みのないリラックスできる治療法だと紹介されています。オーストラリアでボーエンセラピーを指導している機関は一つではないため、いろいろな流派があるのかもしれません。
日本では、ボーエンセラピーはあまり普及していないかもしれませんが、筋膜リリースなど筋膜に注目した治療法はあるようです。体に痛みのあるワンちゃんには、このような治療法も効果的かもしれません。
参考文献およびURL
- オーストラリアボーエンセラピー連盟 http://bowen.asn.au/
- Warren I. Hammer, DC. The Fascial System is a Sensory Organ https://cdn.evbuc.com/eventlogos/83676224/acaapril14coverstoryfinal.pdf
- Pawsitive Bowen therapy http://pawsitiveanimaltherapies.com.au/bowen.htm
- Bowtech http://www.bowtech.com/WebsiteProj/Pages/About/Welcome.aspx
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