獣医監修コラム集

動物の補完・代替医療シリーズ~マッサージ~

リモサボン
犬のマッサージ

マッサージと聞くと、リラクゼーションを思い浮かべる方が多いかもしれません。マッサージはワンちゃんが“気持ちいい”と思うだけでなく、他にもいろいろな効果があるので、ここでご紹介させていただきます。

マッサージの効果と利点

健康なワンちゃんには、健康増進やリラクゼーション、飼い主さんとの絆を深める目的でマッサージは効果的でしょう。また、関節炎などの運動器疾患や皮膚の腫瘍などを早期に発見するのにも役立つでしょう。マッサージをする際に、特定の筋肉が硬くなっていたり、関節が反対側よりも少し大きいなと感じたら、動物病院で診察してもらうことをおすすめします。

怪我をしたり、関節炎に罹っているワンちゃんでは、悪い足をかばって他の足の筋肉や背中が硬くなることがあります。このような状態が長く続いてしまうと、筋肉はどんどん硬直し、血行が悪くなり、自己回復が難しくなります。さらに、そのような状態が悪化してしまうと、強い痛みを伴う筋筋膜性疼痛症候群を起こす可能性があります。

人の筋筋膜性疼痛症候群は、400年ほど前から認識されていましたが、ここ80年ほどの間に注目され始めた疾患です。1991年に発表された論文では、犬にも筋筋膜性疼痛症候群は発生することが明らかにされています。筋筋膜性疼痛症候群は強い痛みを伴うので、治療には筋筋膜弛緩療法など特別な治療法が必要になります。このような状態になる前に、緊張した筋肉をマッサージでほぐしてあげることが大切です。

また、怪我や関節炎などでワンちゃんの足腰が弱くなってしまった場合には、筋肉を鍛える必要があります。しかし、硬直してしまった筋肉は血行が悪く、鍛えることが難しいので、マッサージで筋肉の状態を良好に保っておくと、筋肉は発達しやすくなります。

ある研究では、マッサージを行っている人もリラクゼーション効果を得られるという結果が報告されています。私自身、関節の疾患などで筋肉が硬直しているワンちゃんには、マイオファンクショナルセラピーと呼ばれるマッサージを行っていますが、治療後に心地よくなることはよくあります。

マッサージが禁忌となる場合も

子犬から高齢犬まで、いろいろなワンちゃんにマッサージは効果的ですが、このような場合には、マッサージを行ってはいけません

  • 悪性腫瘍(癌)に罹っている
  • 怪我をしてから1週間以内
  • 感染を伴う場合
  • 骨折して間もない
  • 触ったときに激しい痛みを示す時
  • 心臓疾患に罹っている
  • 妊娠初期20日間
  • 長時間におよぶ車や飛行機での旅行の後(旅行の数週間後から行いましょう)

マッサージの方法

いろいろなマッサージの方法がありますが、ここでは、オーストラリアの動物理学療法で適用されている基本的なマッサージ法の一部をご紹介します。

スキャニング
掌全体を使って、ワンちゃんの全身をそっとなでるようにマッサージします。はじめは首、背中、前足、後ろ足をそっとなで、慣れてきたら、顔や足先にもマッサージします。この時に、どこか硬い筋肉はないか、皮膚に腫瘍はないか、関節が腫れていないかなどをチェックします。
ストローキング
スキャニングよりも少し強く、部分的にマッサージをしていきます。指を使っても掌を使ってもかまいません。
スキンローリング
スキンローリング

スキンローリング

首の皮膚を頭のほうから順に手で持ち上げるようにして肩のほうへ移動していきます。このマッサージはセッションの終わりごろに行うのですが、マッサージに慣れていないワンちゃんは、スキャニングの後にスキンローリングをしてあげると大人しくなる場合があります。
トリガーポイントの弛緩
トリガーポイントの弛緩

トリガーポイントの弛緩

筋肉の一部が硬結し、圧すと痛みを伴う部位をトリガーポイントと呼びます。トリガーポイントは肩や大腿部にみられることがあります。もしトリガーポイントを見つけたら、指1本でポイントに30秒間圧をかけ、放します。これを数回繰り返します。軽度のトリガーポイントであれば、数回の治療で柔らかくなります。

歯磨きの練習におすすめなマッサージ

歯磨きが苦手なワンちゃんや初めて歯磨きを練習するワンちゃんには、マッサージトレーニングをお勧めしています。

まずスキャニングで顔のマッサージを受け入れられるようになるまでマッサージを行います。(顔のマッサージを嫌がる場合には、無理はせず、1日1回数十秒を1~2週間続けます)もし、顔のマッサージをする際に手を噛んで遊ぼうとしたら、ストローキングやエフラージまでマッサージを進め、ワンちゃんがリラックスしてから顔のマッサージを行ってもかまいません。

顔のマッサージを受け入れるようになったら、口元のマッサージを行います。口元を触ってもリラックスしていられるようであれば、そっと歯茎をタッチしてみましょう。歯茎を触ってもワンちゃんがリラックスしていられるようになったら、指先にガーゼを巻き、歯茎、そして歯のマッサージを行ってみましょう。

その後、ワンちゃん用歯ブラシを使ってみてもかまいませんが、あくまでリラックスしている状態が保てる場合のみにステップアップすることをおすすめします。

ワンちゃんによっては、歯茎のマッサージを受け入れるまでに何週間もかかることがありますが、焦りは禁物です。一度嫌な思いをしてしまうと、その後はなかなか受け入れてくれなくなります。

ルール久枝

投稿者の記事一覧

1995年に獣医大学を卒業後、馬と小動物の臨床獣医師に従事。2002年にオーストラリアへ移住し、日本とオーストラリアで獣医業および獣医翻訳業に勤しむ。2011年からはオーストラリアで動物の代替診療を行っている。

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