避妊手術とは、雌の卵巣や子宮などを摘出することで、妊娠しないようにする手術です。去勢手術とは、雄の睾丸を摘出することで妊娠させないようにする手術です。
避妊・去勢手術をおこなうことで、予期せぬ妊娠を防ぐことができます。
また、適切な時期に避妊・去勢手術をおこなうことで、乳腺腫瘍や前立腺腫瘍などの病気の発生率が低くなるということが知られています。
このように、メリットがある一方で、太りやすくなってしまうなどのデメリットもありますので注意が必要です。
雌の避妊手術のメリット
雌の避妊手術のメリットは、望まない妊娠を防げることです。
ドッグランなど、他の犬と接触する機会の多い場所では、飼い主の知らない間に他の犬と交配してしまった、といった事態も起こりえます。
なかには、興味本位で犬を繁殖させてしまう飼い主もいます。犬は多い時には6匹以上の犬を産むことがありますので、生まれてくる子犬のすべてに責任を持てる、あるいはすべての子犬に飼い主を確実に見つけることができる自信がなければ、絶対に繁殖させないようにしましょう。
もう一つの大きなメリットは、子宮や卵巣などに関する病気を予防できることです。
中でも、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍は命に関わる重大な病気ですので、それらのリスクを軽減できることは大きなメリットと言えるでしょう。
しかし、いつ避妊手術をおこなっても病気予防の効果は同じであるかというと、そうではありません。
個体差はありますが、初回の発情がくる生後7~12カ月よりも前に避妊手術をした場合の乳腺腫瘍発生率は0.05%であるのに対し、2回目までにおこなうと8%、2回目以降におこなうと26%と上昇してしまうことが知られています。
メリットがある一方でデメリットについても知っておく必要があります。
避妊手術をおこなうと、基礎的な消費エネルギーが減るため太りやすくなってしまいます。手術前後で与える餌の量が変わらない場合は、肥満になる可能性が高くなりますので、獣医師指導のもと餌の量を変えるか、適度な運動をさせるなどして、体重管理に気をつけるようにしましょう。その他、尿失禁の副作用や攻撃性が高くなることもあります。
どのような治療や手術においてもメリットとデメリットは存在しますが、命に関わる病気のリスクを減らせるという点で、避妊手術は比較的メリットが大きいといえるでしょう。
雄の去勢手術のメリット
雄の去勢手術のメリットは、雌の避妊手術のメリット同様、病気の予防ができるということです。
具体的には、前立腺腫瘍、肛門周囲腺腫、精巣腫瘍などの予防が挙げられます。
腫瘍が転移した場合は、命に関わる事態もおこりえますので、病気のリスクを減らすという点でも、去勢手術は検討すべきでしょう。
病気の予防に加えて、マーキング(排尿により自分の匂いをいろいろな場所につけようとする行為)やマウンティング(交尾をしているように腰を振る行動)、攻撃性を抑えることが期待されます。
飼育しやすくなるという点で、メリットといえるでしょう。
その他、性的な欲求からくるストレスを減らすこともできると言われています。
一方で、雌の避妊手術の場合と同様、ホルモン分泌の変化により太りやすくなってしまうことがあります。正しい食事管理や適切な運動を心がけるようにしましょう。
避妊手術も去勢手術も比較的短時間で終わるため、簡単な手術のように思われるかもしれませんが、全身麻酔をおこなう手術であることには変わりないので、当然、犬への負担も少なくありません。
犬の状態によっては、手術を行なえないこともしばしばあります。手術を受けさせるべきかどうかは、よく獣医師と話し合って決めるようにしましょう
この記事のポイント
- 避妊・去勢は、命に関わる病気のリスクを減らすことができる。
- 興味本位で妊娠させることは絶対にしてはいけない。
- 犬の状態をよくみて、獣医師と相談しながら避妊・去勢手術をおこなうかどうか決めること。
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