獣医監修コラム集

犬の社会化はしつけの基礎。しつけの前にまずは社会化を – 獣医に聞くしつけシリーズ Vol.2

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リモサボン
社会化はしつけの基礎

人と同じく、犬でも社会性は重要です。社会性がなければ、他の人や犬とうまく交流できないだけでなく、留守番が難しくなったり、家族との関係すらうまく行かないこともあります。そして、社会性がなければしつけを行うこともできません
では、社会性はどのように決定するのかご存知でしょうか?社会性は、遺伝によって決定されている部分もあるのですが、「社会化期」の経験によって決定される部分が多いのです。

人の社会性の形成

人の赤ちゃんは、家族が自分の社会の大部分です。その後、保育園や幼稚園に行くようになれば、同年代の幼児や先生、他の子の両親など様々な人に出会います。また、近所の子供や両親の友人、親戚なども自分の世界に関連する存在となります。小学生になればさらにその世界は広がっていきます。

犬の社会性の形成

日本の現状では、生後1か月くらいで親兄弟と離されてしまうことが多いです。その後は、ペットショップでの生活が始まり、そこで触れ合うのは店員さんだけです。新しい家族に迎え入れられた場合は、その家族がその子の社会になります。もしそこでずっと生活していればそれ以上に世界は広がりません。

犬の社会化期は生後12~14週までと言われていますが、それ以降まったく社会化ができなくなるというわけではないようです。

私は、本来であれば2~2.5か月くらいまで親兄弟と過ごすべきだと思っております。1か月で離してしまうと、精神的な成長に悪影響を及ぼし、不安兆候やα症候群など精神の不安定につながるという説もあります。

社会化期に社会を知らなかった場合

もし、生後5,6か月まで家族の中だけで生活していたらいったいどうなるのでしょう?これは、人の子供が小学生まで家族しか知らず、突然中学校に入るのと同じようなものです。そうなれば、初めて会う人や見るものすべてにどう接していいのかわからず、緊張と恐怖心で何もできなくなるのではないでしょうか?言葉が通じる人間でもそうなのです。

言葉が通じない犬であれば、恐怖で固まってしまうか、知らないものすべてを威嚇したり攻撃したりして、寄せ付けないようにするということになってきます。

そうならないためには、警戒心よりも好奇心の方が強い社会化期に色々なものや人を見せて、大丈夫なんだという経験をさせてあげることが重要なのです。

人への慣れ

時々、「この子、男の人が苦手なんです」ということを聞いたことはないですか?
もともとそういう子だったというわけではないのです。社会化期に女性しかいない家庭で育って来たり、男の人に怖い思いをさせられたりしたことがある子が、そうなることが多いです。

他にも、髭面の人だけにほえるとか、傘をさした人だけ怖がるということもあります。これらも小さいころに、見たことのないものだったため、知らないものへの警戒心からそういう行動をとるのです。

犬は意外といろいろなことを区別して認識しますので、さまざまな種類の人に合わせてあげるといいでしょう。ただ単に見るだけでもいいのですが、可能であれば、少し触ってもらったり、おやつを与えてもらったりするといいイメージを付けてくれます。公園などで、頼めそうな人がいれば、おやつを渡してその人からおやつを与えてもらうというのはいい方法です。

慣れさせたい具体的な人の特徴

具体的に、どのような人を区別するのかを以下にあげます(特に重要と思われる特徴は太字にしています)。

性別・年齢 男女子供・大人・老人
外見 ひげ・長髪・金髪・坊主・メガネ・白衣・帽子・傘
高い声低い声
行動 走って向かってくる・走って遠ざかる・自転車やバイクに乗っている

これらは、犬が警戒して吠えたりおびえたりすると、私が実際に聞いたことのあるものです。
自転車やバイクに警戒心がないのも困りますが、それを見ると我を忘れて吠えて追いかけるという子もいました。上にあげたような特徴を持つ人に対して、過剰な警戒心や攻撃性を示さないように、子供の頃から慣れさせてください。

次回は、その他のものや動物に対する社会化について書かせていただきます。

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投稿者の記事一覧

国立大学獣医学科を卒業後、動物病院2件合計8年間勤務。現在は獣医師として働きつつ、動物および人の健康に関する記事をウェブ上で連載中。大学卒業後、ロンドンでペットシッターも経験し、しつけなどのパピー教育にも力を入れている。

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